Research

医療用材料の超精密加工技術の開発

手術用内視鏡をはじめとする高度医療デバイスの量産では、生体安全性の高いポリサルホン樹脂や、ステンレス鋼、プラチナ合金を対象とした精密切削が広く用いられつつあります。
付加価値が非常に高く、かつ生産数が限定された多品種少量生産のこれらの部品に対して、金型等を使用せず、複合加工機を用いて素材から直接完成形状を造形することが求められています。
このような製造において、直径0.3mm以下の微細穴加工や、薄物加工、バリ発生の厳しい抑制といったテーマで製造技術、加工条件、新しい工具形状の開発といったテーマでの研究を現在進めています。

多軸制御切削加工における工具姿勢計画法の開発

近年のマシニングセンタや複合加工機においては、切削工具の刃先位置以外に、工具の姿勢を変更可能な多軸制御機構が一般的に搭載されるようになっています。
従来のCAMソフトウェアアルゴリズムでは、工具経路の生成後、干渉の生じない姿勢を決定して工作機械への指令値をポスト処理によって導出していたため、機械の軸構成に起因する急加速や特異点の通過を避けることが難しい状態でした。
これに対して本研究室では、機械座標系上での姿勢決定を行うための高速な干渉検出技術をGPGPUと呼ばれる大規模並列演算手法を用いて実装し、様々な用途に合わせた工具姿勢計画法を提案しています。

数値制御切削加工(NC加工)を対象とした切削抵抗予測技術の開発

航空機の構造材に代表される高効率加工においては、素材の大部分を切削によって除去する工程を効率化するため、工具破損や加工対象物変形の発生しない範囲でのできるだけ速い工具送り速度条件の設定が求められています。
工具位置ごとにめまぐるしく変化する加工対象物の除去状態を推定し、短時間で切削抵抗を推定することはこれまで難しいと考えられてきました。
これについて本研究室では、従来実現が難しいと考えられてきた同時多軸制御加工を対象とした干渉領域推定を、GPGPU(大規模並列演算処理)ハードウェア上で高速に実施する幾何処理エンジンを開発し、実時間での切削抵抗予測を実現しています。

工作機械の主軸運動および除去領域のオンマシン測定/推定技術の開発

近年の工作機械においては、主軸送り速度の高速化と、微小線分による工具指令位置の設定によって、主軸の送り速度がCAMソフトウェアから指令された値に到達せず、加減速の影響により工具一刃あたりの送り量が変化するため、正確な切削抵抗予測が難しい問題があります。
これについて本研究では、数値制御コントローラの補間機構をモデル化することによって、実送り速度をNCプログラムから推定して切削抵抗の予測に用いる新しいシステムの開発を行っています。
また、金属積層造形や鋳造といったニアネットシェイプな素材製造工程では、素材形状のばらつきから、しばしば後加工の切削によって仕上げ加工を行う際の加工対象物の除去領域推定が困難で、切削抵抗の予測ができない問題があります。
そこで、本研究では、ラインレーザーを用いた高速な非接触計測手法を開発し、加工直前にオンマシンで加工対象物を測定することにより、切削抵抗予測に必要な工具各位置における除去領域を短時間で推定するシステムの開発を行っています。

WAAMによる造形技術開発

ワイヤ+アーク放電によるアディティブマニュファクチャリング( Wire and arc additive manufacturing: WAAM)の実用化に向けた研究を取り組んでいます。
工程設計、積層経路計画、加工条件の検討、造形物評価を行い加工工程の最適化を行っています。
また、異種金属造形や複雑形状造形など造形物の高付加価値化にも取り組んでいます。